過去から未来の記憶を並列に見ることができる主人公を通して、作者自身の戦争経験を描いている。原子爆弾という一つの強力な兵器がなくとも、通常兵器の圧倒的な物量が都市を更地にしてしまう。1人の力ではどうにもならない状況に対して、「そういうものだ」と割り切るしかない。そうせざるを得ない状況を、実体験でありながら、他人事のように淡々とした語り方で描くことで、凄惨さを際立たせている。
不規則に時代を漂流するように場面が切り替わるのは、過去の記憶がフラッシュバックする感覚に近く、それを主人公の超能力にしてしまう発想が面白い。
◽️ドレスデン爆撃
・ドイツのドレスデンに向けて、イギリス空軍とアメリカ空軍が3900トンの爆弾を投下した。
・民間人の死者は公式には3万5千人とされている。